会長ブログblog

2014.01.18

森林の囁き

先週末からのまとまった雪で、コントラストが強調された雪景色に変わった。

魚沼の里山の植生はブナやナラなどの落葉広葉樹が多く、雪が積もると
松や杉だけが山裾や稜線沿いに存在を表わす他は白一色になる。
特に人工林の杉は戦後昭和40年代頃まで盛んに植えられたから、
樹齢50~60年前後に達し、間伐を施さないので密な林形を造っている。

構造材や壁材として昔から馴染み深い木材だが、豪雪地域では「杉と男は
育たない」などと軽んじられても来た。 雪国の杉は斜面に沿って雪の重みで
根が曲がってしまう上、北側と南側の成長の違いで年輪に差が出来、独特の
歪みを持つ性質だから、よほど丁寧に乾燥させないと使い勝手が悪い。

木材の輸入自由化と円高によって外材が安く豊富に入り、日本の林業は
ほとんどの地域で衰退した。 初めてヨーロッパに旅した20歳の頃、時代の
先端をゆくパリであっても、日本のようにティッシュ・ペーパーでハナをかんだり
せず、ハンカチでかむのが普通だった。

昭和30年代くらいまではトイレット・ペーパーやティッシュ・ペーパーは無く、
はな紙と呼ばれたB5版サイズの上質紙を折りたたんで使った。
汲み取り式トイレには、質の悪いグレーの再生紙や新聞紙が使われていた
時代だ。 それくらい木材は高価で貴重なものだった。

今では折角植えた杉なのに、間伐も枝打ちもせず、下草も刈らず、手を入れないで
放置された状態が続く。 建築用の針葉樹もパルプ用の広葉樹も外材に押され、
荒れ放題の森林や、熱帯雨林の乱伐による環境変異をも齎している。
一方でこの時季、雪が上がった後の杉林は絵のように美しい。

私たちは景観という価値にもっと重きを置いてもう一度里山を見てはどうか。
木を植えて育てるのは、半世紀先の人々に対する先行投資だ。
私たちが享受した環境や景観を次の世代に引き継ぐのは、人類共通の使命だ。
厳冬期の里山から聞こえてくる、森林の囁きに思いをしよう。

冬の来し 越後の山は野ざかひの 端山の奥に白くつらなる (柊二)


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