トランジスターラヂオを始めて持ったのは中学生になってからだ。
小学校にあがる頃までは、どこの家にも真空管式のラジオが箪笥の上や棚の上にあった。
箪笥の上に置くから材質も木と、スピーカーを覆う厚手の織布で出来ていて家具のようでも
あった。 チューナーはスライド型と円形のものとがあり、チューニング・インジケーターという
ネコの目のような緑色のランプが点いていて、それをたよりに選局した。
小学校の高学年からはテレビの時代になったからラヂオの人気は落ちた。
中学校にあがると深夜放送を聴くためにトランジスターラヂオを買った。
FM放送はNHKだけで、それもステレオ放送の実験とかで汽車の走り抜ける音とか
クラッシックしかかけないから、専らAMを聴いた。
ニッポン放送に文化放送それにTBSラヂオだった。 電波の関係で深夜になると東京の
放送より関西の放送の方がよく入るので、東京発の放送を関西の電波で聴いたりした。
だからコマーシャルになると大阪御堂筋の店のCMが流れたりしていた。
ハガキで曲をリクエストしてディスク・ジョッキーが紹介するのが深夜放送のスタイルだ。
DJの人気で聴取率が決まる。 糸居五郎がはしりでニッポン放送は局つきの斉藤安弘や
亀淵昭信。 文化放送は作家の落合恵子や声優の野澤那智がDJをつとめた。
学校での話題も昨夜の放送や、かかった曲の評価だった。 そんな中、異彩を放ったのが
アメリカ軍の極東向け放送「FEN」で米語放送だからすごくかっこ良く感じた。
先日の電力ピーク・カット社会実験では、テレビを消してラヂオを聴こうといっていた。
明るすぎた照明を落としてローソクを点けたら、むしろ好評でムードがあって良かったと
いう意見も多かった。 東京でも、駅なんかは今まで明るすぎたので、少し照明を落とす事
により、ヨーロッパの都市のような落ち着いた雰囲気が出たという評価もあった。
会社では昼は照明を点けないで過ごしているが、夕方にならないと不便は感じない。
いつも当たり前と思っていたことが、違う事をやってみて新しい価値に気づく。
テレビの画像は説得力あるけど、ラヂオの音はしみじみと心に響く。
本を読んだり手を動かしたり、ほかの事をやりながら聴けるのもすごく良い。
深夜ならではの構成と選曲の6時間の生放送「NHKラヂオ深夜便」は22年目を迎える。