会長ブログblog

2023.01.14

寒九の水

今日は小正月の宵晩、子どもたちによる鳥追い行事が行われた日だ。

かつて「成人の日」は15日で祝日だったから、今日は手作りの
雪洞「鳥追い洞」を造り、夕方から集まって遊んだものだった。
本来は農作物の害鳥を追い払う豊作祈願の行事だったというが、
最近では行事そのものも見かけなくなり、寂しい限りだ。

鳥追いに限らず伝統行事といわれるものが年々廃れてゆく。
別に新型コロナ禍が原因ではなく、それ以前から情報伝達技術の
発達と共に人と人とのふれ合いが希薄になった。スマート・フォン
を介しての会話やゲームで事足りる世の中に変わってきた。

いつからか、多くの乗客で賑わう電車内でも、皆寡黙にスマート・
フォンを操作してそれぞれの世界に浸っている。会話はおろか、
新聞や本を読む人も見なくなった。新たな技術が新たな行動形態
を生み出す。過去にこだわるのはノスタルジーでしかないのか。

今週は寒中らしくない穏やかな日が続いたが、今日は寒の入りから
9日目、寒九の水汲みの日だ。酒や味噌・醤油など醸造品を仕込む
のに冷たい清水が適し、味が良くなるといわれている。この日に
汲んだ水は腐らないともいわれ、神棚に供えたりもする。

晴れた日の朝は放射冷却で冷え込む。小出辺りでは夜明け前ごろ
から濃霧に覆われ、見通しが利かなくなる。川からの水蒸気が
冷やされ霧に変わる。この霧が柳や胡桃などの河畔林の枝で凍ると
「シガ」と呼ばれる樹霜となり、美しい景色を造る。

鈴木牧之の北越雪譜は雪国の生活や自然現象を紹介し、江戸町民の
勧心を買ったが、そこでも「シガ」は紹介されている。
雪国の生活文化は未知の世界で、興味深く読まれたに違いない。
その独自の雪国文化を継承するのは、今を生きる私たちの使命だ。

山峡を 好みてわれはのぼり来ぬ 雪の氷柱のうつくしくして (茂吉)


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