会長ブログblog

2015.05.09

仕舞(しもた)屋

一昨々日には立夏が過ぎ、雪国の春は躊躇なく駆け足で進んで行く。

家々の庭にはつつじや芝桜が赤や白の賑やかな花をつけ、道端には蒲公英が
黄色い可憐な花を咲かせている。 空にはひばりの忙しい鳴き声と発声練習中の
ウグイスのぎこちない谷渡りも聞こえ始めた。 少し前には商店街のアーケード
にもツバメが帰って来て巣作りを始めていた。

自然の営みは毎年変わることなく繰り返されるが、人間の営みは時代と共に
変わってゆく。 永年に渡り営業してきた商店でも後継者が無く主の高齢化で
止む無く店を閉じるところが増えて来ている。 本町商店街にも空き店舗が
目立つようになり、1ブロック10軒前後の店舗中2軒程度が閉じている。

雁木通りの時代は各店の間口は木製引戸と縦格子の建具が入り、仕舞屋に
なってもそれなりに街並み景観は維持出来ていた。 今では鉄骨のアーケードに
金属のシャッターが下ろされているので、文字通りシャッター通りと呼ばれ、
景観も風情も失ってしまった。

商店街は商業集積だったはずが、今では学習塾や福祉施設も看板を揚げる。
店の名前も芳林堂やサカキヤといった一般的な店名もあれば、藤岡薬局や
イトー靴店のように苗字と業種の組み合わせもある。小出で特徴的なのが井口、
伊藤、松原といった一族が苗字と名前を組み合わせた屋号が多い事だ。

伊久や井半、松恒や山一、高仙に高国といった屋号が現存するが、個人商店の
特徴が名前からも窺い知れる。 自分の名前を屋号に付けて店を持つことは
商売に対する愛情や思い入れを育み誇りに感じたことだろう。
他に家紋をそのまま使う、カクニとかカネキといった屋号もある。

春本番を迎え自然の持つ見事な生命力に軽い嫉妬を憶えながら、街の盛衰を
目の当たりにして、人間の営みが時代という急流に翻弄されるのを只見ている
自分がいる。 悲観ではなく、再び街並みが賑わう日が来る事を信じている。
何も無いところから先人たちは今の街を造って来たのだから、当然だ。

春晩く 五月のきたる我が郷や 木々緑金に 芽吹きわたれる  (柊二)


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