会長ブログblog

2011.12.03

盆暮れ勘定

日本中が、かつて無い深い悲しみに沈んだ、歴史に残る年も一ヶ月を残すのみとなった。

自然災害であっても、歴史から学べば元々住んではいけない場所や、防災施設を拡充
しなければ必ず自然の力に屈する事が分かっているのに、そうした情報が充分でなく
受けてしまった被害は残念でならない。 今年ほど自然の脅威を感じた年も無かったが
この辛い経験を二度と繰り返さないために、未来に伝えて行かなければならない。

考えてみれば、今のような便利で快適な生活を送るようになって、まだ一世紀までは
経っていない。 人間の寿命が70~80年だから、この間の出来事を自己体験として
見てきた人もいない。 記録として残してある資料はあっても、そこから学び活かすと
いうことはかなり難しいことだから、意識を持って取り組まなければ繰り返してしまう。

今から30年くらい前までは、「盆暮れ勘定」という言葉が普通に使われていた。
お盆や年末になると、それまでの間の売り掛け金を決済する仕組みだ。
今のように会社勤めが普通になり、毎月給料がもらえる月給制になったのだって
そう昔からの事ではない。 戦後まで続いた丁稚制度を見れば分かる。

通帳(かよいちょう)という、商店ごとの売り掛け帳簿が各家庭にあり、普段の買い物は
通帳に書き付けてもらい、お盆や年末に勘定をするのが当たり前の社会だった。
商店はその間の仕入れ決済をするのだから、資産を持った人でなければ商業は
やれなかった。 その後、金融制度が発達してその代行を銀行がするようになった。

だから銀行が相手にしたのは、そうした商業や製造業のための融資であった。
今のように、請負業やサービス業に対しての融資はその後の事で、個人向け融資など
つい最近始まった事だ。 金融一つとっても、この数十年で劇的に変わっているが、
そんな事でさえ記憶の底にしかないのだから、歴史を活かすという事は難しい。

12月に入り、恒例の一年を振り返っての今年の漢字とかが話題になる時期を迎えた。 
ここ数年、あまり明るい話題は聞かなくなった。 何をそんなに期待しているのか?
分からないが、一年を振り返る時に、残念な思い出しか無ければ自らを不幸にして
いるとしか思えない。 どんな年でも良いことの一つや二つは必ずあったはずだ。

折りしもあれ 借金とりが門を打つ 曇り日の家の 海の如きに  (牧水)


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