会長ブログblog

2010.11.13

水郷小出

♪ 枯葉散る夕暮れは 来る日の寒さをものがたり 雨に壊れたベンチには ・・・

時雨模様の枯葉散るこの頃、関東との気候の差を感じる季節になった。
日本列島は表日本と裏日本を中央の山脈が分断し、日本海側と太平洋側に分水する峰々
が連なる。 越後と関東は谷川連峰により利根川水系と信濃川水系とに分かれ、気候風土
の全く違う地域を作り出す。

気候風土の違いは、農業や産業の違いを生み、関東人と越後人の気質にも大きく影響を
与える。 雪国特有の文化は、こうした風土に育まれながら作られてきた。
日本海で蒸発した水分が、大陸からの冷たい季節風により雪雲となって越後の山間地に
たくさんの雪を降らせる。 豊富な積雪は水資源や電気を供給してくれる。 

魚沼はそうした恵みを享受しながら、世界でも珍しい豪雪地帯に生活基盤を築き、
縄文時代から営々と歴史を重ねてきた。 そうした人々の営みは、風土と共に生きる
知恵を生み、その事は瀧澤馬琴の「南総里見八犬伝」や鈴木牧之の「北越雪譜」にも
詳しく紹介されている。 

小出は古くから水郷として知られ、越後三山からの伏流水の恩恵に浴してきた。
町の中心部の家々には、通りに面した店舗と裏に連なる住居との間に水路が流れていて
生活に必要な水に事欠くことは無かった。 これら豊富な水を利用して水路網を整備し
冬の雪を処理する「流雪溝」発祥の地としても知られている。 昭和初期に発刊された
「水郷小出」という本には、東洋のベニスという副題がついていた。

豊富な水資源は生活に利用されるだけでなく、河川環境にも優れた影響を与えた。
魚野川の鮎釣りは、夏の風物詩として、多くの釣り人の垂涎の的であった。
新潟県の内水面水産試験場もこの地に設置され、鱒や岩魚など淡水魚の養殖技術は
早くから確立されてきた。 

こうした豊かな水資源をうまく利用しながら小出は栄えてきたが、今の時代はどうだろう?
「地域づくり」とか「まちおこし」という言葉が流行った頃から、我が国の地方のまちから
元気や活気、あるいはやる気が失われていったような気がする。
地域の歴史を振り返れば、自然と共生しながら時代を作ってきた事が良くわかる。

この豊かな環境を次なる世代につなげてゆく事が、私たちの使命だろう。


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